事業承継

評価方法選定考慮要因

事業承継に係る判例や実務の例では下記のような事情を考慮して評価方法が選定されます。

企業価値形成要因からの評価方法の選定考慮要因

  1. 評価対象企業のライフステージ

    評価対象企業の属する業界および評価対象企業自体のライフステージが成長基調、安定基調、衰退基調のどのステージにあるのかが評価方法の選定の際に考慮されます。
    例えば、成長基調にある企業においてはネット・アセット・アプローチでは将来の収益力が評価額算定に組み込まれず、過小評価となることが考えられます。
    逆に、衰退基調にある企業においてもネット・アセット・アプローチでは過大評価となってしまうことが考えられます(この特徴は特に減損会計を適用していない企業については顕著に現われます)。

  2. 評価対象企業の継続性

    例えば、評価対象企業の継続性に重大な疑義がある場合においては、一般的に企業の継続性を前提としているインカム・アプローチやマーケット・アプローチはその適用前提を欠き、評価方法として選定対象外となることがあります。

  3. 評価対象企業の有する特殊な強み等(知的財産や特殊なノウハウ等)

    例えば、評価対象企業が特殊な知的財産やノウハウを有しており、それらが貸借対照表上に計上されていない場合(外部から購入等をしたものでない場合)、ネット・アセット・アプローチはこういった価値を評価額に反映しないため、評価方法として選定対象外となることがあります。

  4. 類似性のない新規事業

    例えば、評価対象企業が全くの新規事業を行っている場合、比較対象が存在しない場合があり、このような場合にはマーケット・アプローチによる評価方法を選定することが妥当でない、あるいは選定することができない場合があります。

  5. 収益獲得の源泉が特定の個人に依存している場合

    収益獲得の源泉が現経営者固有の人的関係等にある場合(売り上げの大部分を現経営者に依存しているなどの場合)、承継後においても現経営者が事業を運営していくのか否かで評価方法が異なることが考えられます。
    承継前でも事業そのものは何とか利益を出しているが、過去の借入が過大であるなどの理由で事業承継を行うような場合にしばしば見られますが、承継後も従前と同じく現経営者が経営を担う場合があります。このような場合には従前と同様の収益が見込まれるため、企業評価方法としてはインカム・アプローチが用いられることが多いようです。
    このような場合とは異なり、事業承継の動機が現経営者の健康問題等にあり、事業承継後現経営者が引退するといった場合は事業承継後の収益構造が大きく変わるないしは予測不能な状況に陥ることにより、インカム・アプローチが適用できず、客観性の観点からネット・アセット・アプローチが採用されることがあります。

承継対象株式の範囲からの評価方法の選定考慮要因

  1. 承継対象株式が全株式である場合

    例えば、承継対象企業(ないし事業)の株式の全部を承継する場合を想定すると、承継企業はその企業の意思決定のすべてを自由に行うことができます。したがって、例えばインカム・アプローチによる評価を選定するにしても、配当還元法ではなくフリー・キャッシュ・フロー法等の方が選定されることが多いです。また、そのフリー・キャッシュ・フローの見積もりにおいても、承継企業のシナジー効果を考慮したものとなります。

  2. 承継対象株式が一部にとどまる場合

    上の例とは逆に、株式の大部分を承継対象企業に残したままである場合、承継企業は意思決定を行うことが困難になることが想定されます。したがって、上の(1)の場合とは逆にフリー・キャッシュ・フロー法よりも配当還元法の方が選定されることが多く、また、シナジー効果の評価額算入範囲も限定的になることが考えられます。

評価対象企業の株式の取得目的

  1. 事業承継後再売却を予定する場合

    主にいわゆる投資会社が行う場合がほとんどですが、特定の企業(特に土地等固定資産に含み益のある企業)を取得し、その後承継対象会社の資産のスリム化を行った後、外部に再売却ないしは上場させるといったスキームが組まれることがあります。
    このような場合には事業そのものというよりは資産の取得・再売却という意味合いが強いためインカム・アプローチよりも、将来の市場売却価額をより適正に示すマーケット・アプローチ及び現在の資産の時価を示すネット・アセット・アプローチ(時価純資産法)が用いられることが多いようです。

  2. 事業承継後清算・再編成等を予定する場合

    例えば承継対象会社が倒産の危機にあり、その取引先がその販売ルートを確保する等の目的で株式を取得し、その後承継会社にとって必要な事業のみを残してその他の大部分の事業の清算等を予定して事業承継が行われる場合があります。この場合には清算対象となった事業に関しては時価純資産法が選定されることが多いようです。

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