株式譲渡

株式譲渡概要

事業承継における株式譲渡とは被承継会社の株式、すなわち被承継会社の株主たる地位を現在の株主から承継会社に譲渡することを言います。比較的小規模の企業の事業承継においては、意思決定の迅速性・確実性を確保するため、被承継会社の株式の100%を譲渡することが多いようです。

株式譲渡においては、法律上株主たる地位の譲渡となりますので、承継前と承継後で株主構成以外に法律構成に変化はありません。
また、税務上は単なる有価証券(または有価証券に類するもの)の譲渡になります。
このような法的性質・税務上の取扱から、経営者側・従業員側・被承継会社側において次のようなことが課題となることが多いようです。

株式譲渡における法律上・税務上の課題

経営者側(法律面・税金面)

法律面

組織法上

まず、組織法上承継前の被承継会社と承継後のそれは全く同一のものであり、事業承継においては、株式の譲渡における会社の承認(会社法136条ほか)等の手続き面以外で、組織法上の問題を抱えることは通常考えられません。


私法上

次に株式譲渡においては承継前と承継後で株主構成以外に法律構成に変化がないことから、被承継会社の債務に関する法律関係に変化はありません。
つまり、承継後の債務者は被承継会社そのものであり、また、承継前に存在した被承継会社債務についての経営者の個人保証がある場合、当然その保証債務も承継前と変わらず承継後に残存します。
また、債務者・保証人に変化がないため、当該株式譲渡自体が詐害行為取消権(民424条)の対象となることは通常考えられません(債権者を害することを目的としてスキームが組まれたと認定されるような場合には詐害行為取消権の対象となることがあるかもしれません)。
事業承継における詐害行為取消権について詳しくはこちらをご覧ください。
また、法律上債務者・保証人に変化がない、すなわち債権者としては当然に承継企業に債権を行使できることになるため、経営者の個人保証について減額や免除の交渉材料が少ないといえます。

税務面

税務上、株式譲渡がなされた場合、被承継会社の株主がその保有する株式を売却した以外の何物でもないため、株主に売却益が発生していれば株主が個人であれば所得税(譲渡所得:株式分離)、株主が法人であれば法人税が課せられます。税務上の譲渡価額については以下のリンクをご覧ください。

参照リンク

従業員側(法律面・待遇面)

法律面

株式譲渡においては事業承継の前後で株主構成が変化するに過ぎないため、従業員側から見ると被承継会社との雇用契約になんら変更はありません。

待遇面

したがって、従業員の待遇に関しても事業承継の前後で変更される点はありません。

会社側(法律面・税金面)

法律面

株式譲渡の場合、被承継企業にとっては株主構成が変更されるにすぎないため、被承継会社から見た法律関係で変更される点はありません。

税金面

また、株主構成の変更に過ぎないため、事業承継自体によって課税関係が発生することはありません。

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